建築業界に２０年以上携わって参りましたが、最善の提案に基づいた最良の選択がされたと思うことができない建築物が多く存在していると常々感じてきました。不完全な施工によって、一般的な耐用年数よりも早い時期に修繕をしなければならなくなっている建物、的外れな診断と提案によって無駄で無意味な工事をされた建物、全くその心配がないにもかかわらず不安を煽られ不必要な工事を押し付けられた建物とお客様方をしばしば垣間見る実情に憂慮の念を強くしております。

　歴史と文化、創ってきた人々の想いが滲み出ている様が肌で感じられる健全な街並みとそうではない街並み、どうしてこのような差が生まれているのでしょうか。多くの要素が相互に関係してきた結果だと思いますが、街の構成要素である建物を作り維持する仕事を請け負う建築業者の資質や素養もそのひとつだと受け止めております。
　建築業界には星の数ほどの業者が存在しております。そのすべての業者が「お客様から、社会からの信頼と負託に応えよう」という精神に溢れていたら、このような憂いもなく、業界の一員として責任を感じることもなかったでしょう。

　私どもは建築業界の一員として、善良な精神を背景に、人を思い、街を思いつつ建築業務に携わることで、安心快適を一義としたうえで、それぞれの個性が反映されていながら、街に溶け込む良い建築物を残そう、良い街を創ろうと考えるお客様と社会の要請に応え、そのお客様と地域社会から信頼されたいと願っております。

　何年後の事でしょうか。もしかすると数十年、百年後の事かもしれません。この工事、この街並み造りのお手伝いをしてきたと感慨にふけることができる将来を見据え、地域社会から希求される企業姿勢を貫いてまいります。